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213 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 44 55 ID oBVbH7lN 12月31日。年が暮れる寸前に、くるみは退院した。 右目以外には打撲や擦り傷程度の怪我しかなく、後遺症や重度の欠陥は見受けられなかった。 俺が病院に駆けつけたあの日、病室に戻った時に見たくるみは、顔を真っ赤にしており熱があった。 慌てた俺は、くるみを担いであの初老の医者のもとへ行き、検査をしてもらった結果、傷口から感染するたぐいのウィルスなどではなく、暖房にあてられたんでしょう、と医者は笑った。 後日、病院に行くと、職員らに『王子様』と呼ばれるようになってしまった。明らかにあの医者が一枚かんでいる。取り乱していたとはいえ、人生で一度するかしないかの失態だ。 心配してくれてありがとう、と慰めてくれたくるみは、まだ顔が赤かった。しかし、鏡に映る俺はもっと赤かった。 父さんと母さんは、ようやく、今ごろになって休みが取れた。ちょくちょくフルーツの盛り合わせやら服やらを送ってくれていたが、だからって許されない。 俺が角を立てて怒ろうとしたところ、くるみが気にしなくていい、と言ってくれたのでくるみのお願いを一つ聞かせることで勘弁してやった。 肝心のお願いだがもう決まっているようで、訊くと、まだ秘密だよ、と笑っていた。 214 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 45 22 ID oBVbH7lN くるみが笑ってくれるのは、本当に嬉しい。 医者が言うには俺が来る前、くるみは大声を上げて発狂したそうだ。 無理もない。くるみ本人が言うには、事故の瞬間を今でも鮮明に覚えているらしく、退院の少し前までもフラッシュバックすることがあった。 最近は少ないようだが、一生もんの傷になりかねない。右目と同じくらい、俺は心配していた。 しかし、くるみは笑えている。傷を乗り越え、右目の不便さも克服し、今を生きている。俺にとって、これほど嬉しいことはない。 そう、嬉しいんだ。絶対に。 215 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 46 02 ID oBVbH7lN 「キミ」 あの後に移った相部屋の人や、病院の職員の人にお礼を言いに回っていた俺は、ロビーで例の医者に呼び止められた。 「この度は、ありがとうございました」 俺が深深と頭をさげると、いいからいいから、と笑った。 「いやぁ、王子とお姫様がいなくなると寂しくなるねぇ」 「勘弁してください」やっぱり広めたのはアンタか。 「ご家族は?」 「お姫様を車に誘導してます」 「うん、だったら丁度いい」座って、と言って順番待ち用のソファーを手で指した。 俺が座ると、医者も隣に座る。「あのこと、彼女に言えたかな?」 何かが、俺の胸にチクリと刺さる。 「言えてないっス」ため息。 「そうか・・・なら、もう言わないでくれ」 「え?」 「いいかい。君自身は意識していないかもしれないが、彼女はキミに依存しきっている。非常に不安定だ」 医者は短く息をついた。 「今、その事実を伝えれば、どうなるかわからないんだよ」 異常とまではいかないが、くるみが俺に依存し始めているのは気付いていた。 216 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 46 51 ID oBVbH7lN 明け方には必ず電話があった。今日は来てくれるのか、何時に来てくれるのか。 訊かれるまでもなく、俺は毎日お見舞いに行った。冬休みで、地元ではないということから、俺には見舞いしかすることがなかったのも事実だ。前日にくるみが欲しい物を聞いて、それを買って病院へ。 面会の開始から終わりまで、くるみの傍らで過ごすと言うのが日常と化していた。お陰で、この小さな病院で俺はちょっとした有名人だ。若干、不愉快でもある。 変化といえば病院に行く時間、帰る時間ぐらいなもので、それもくるみによって左右された。病院で有名人、というのはこういうときには便利で、早くに行くとこっそりと裏口から入れてくれたり、一晩泊まらせてくれたこともあった。 その場合、相部屋の人には迷惑がかかるので話したりはしなかったが。 多くの大人に助けられるたび、つくづく自分がガキだと認識し、同時に、ガキのままではもういられないのだと意識した。 ただ、意識するならガキでもできる。それをこの身で証明してしまった。 「それって、俺が言うタイミング逃したから?」 「まさか。ほんの8割くらいしかキミに責任はないよ」 「大半・・・」 「いや、冗談冗談」 どこまで本気かは分からないが、俺に責任があるのは確かだ。「俺は、どうすればいいんですか?」 「今は、彼女の傍にいてやりなさい。一番近くに、だ」 キミに出来ることは、キミにしか出来ないことなんだよ。 その一言で、踏ん切りがつく。 「うっス」俺は大きく頷く。 「よし、頑張れ王子様っ」 あの日のように、強く背中を叩かれた。 「ああ、そうだ。右足、大丈夫かい?」 「え?」耳を疑った。 昔、ちょっとした事故に遭い、俺の右足にはその後遺症がある。とはいえ、本人にしか分からない程度で、その本人ですら時折忘れてしまうような怪我だ。 それを見抜くとは、やはり年の功というヤツか。俺は、問題ありません、とだけ言った。 「治療ならいつでも請け負うぞ、格安で」 「結局は金ですか」 亀の甲ではなく、金の功ということか。 217 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 47 35 ID oBVbH7lN 入り口から、俺を呼ぶ声がする。立ち上がり、歩き出す前にもう一度振り返る。 「俺はただのヘタレっスよ」多分、今の俺はすごく頼りない笑顔をしている。 「ヘタレで結構、未熟で結構」 彼は一段と大きく笑った。俺はその姿に、もう一度深く頭を下げ、くるみのもとへ歩く。 「少年よ、野望を抱け。がっはっは」 笑い声に背を叩かれた気がした。野望じゃねぇって。 叔父さんと叔母さんはいずれも公務員だった。 休みが安定しているのが公務員の良い点で、二人は旅行を趣味とした。くるみと三人で各地を旅し、その度に絵葉書やキーホルダーなどが贈られてきたものだ。 車内でそんな思い出話をしている時、流れていく外の景色を見ながらぼんやりと、もうもらえないんだなぁ、と呟いた。直後、助手席からCDケースが飛んできた。避ける暇などない。 「っっ!!なぁにすんだよっ」面だったからよかったものの、角だったらシャレにならなかった。 「うっっさい、バカタレッ」 黒崎家の遺伝なのか、母も亜麻色の髪をしている。歳のせいか、くるみのような可愛さはないものの、昔はなかなかだったらしい。細く逆三角形の顔と鋭い目つきを見るに、たぶん昔とはまだ狐だった頃の話なのだろう。 助手席の母は、これぞ、というほどの鬼の形相を披露していた。血の気がひき、冷静になったことで自分の失態を理解した。 「う・・・あぁ、わ、悪い、くるみ」 しどろもどろになって謝り、くるみを見る。 包帯が取れたため、白い肌がよく見える。体格と同じく顔も小さめで、ブラウンの瞳と肩下までの栗毛が可愛らしい。ただ、右目には大きめのアイパッチがある。 「いいんだよ」変わらない笑顔のまま、彼女は言う。「一緒に行こうよ、旅行」 変わらない、昔のままのくるみだ。 他人の罪を許し、慰める。それをいとも簡単にできる人間はそう多くない。ましてや、無意識では尚更だ。 だからこそ、俺は昔から目が離せなかった。人を気遣い、自分より高い位置に置く。いわゆる自己犠牲。俺はそんなくるみがずっと心配だった。ついでに言えば、理由は違うが姉のことも心配していた。 218 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 48 14 ID oBVbH7lN 姉。 「そういや、姉ちゃんは来てないの?」 「ん?ああ・・・来なさいって言ったんだけどねぇ」 「薄情だなぁ」親戚の一家の大問題だというに。 「仕方ないよ。お姉ちゃんも忙しいんだよ」 くるみが笑う。嬉しいことだ。喜ばしいことだ。 ━━なのに、俺の胸からは不安が拭いきれない。むしろ、くるみが笑顔を浮かべるたびに、不安は身を揺らし、その存在を示す。 くるみは元気すぎる。 たかだか15歳で、あの惨事を目にし、右目の視力を失った。俺なら、立ち直れない。 あの医者の言うように、俺が傍にいることの効能ならば、何も文句はない。ただ、俺には、くるみが心配させまいと強気に振舞っているのではないか、と感じてしまうのだ。 「・・・お父さん、どうしたの?」ふと、母が呟いた。 母が狐なら父は狸、と言いたい所だが、父はゴリラだ。マウンテンゴリラ。 大きな腹はメタボかと思いきや、服を捲るとそこには目を疑うほどの筋肉が広がっている。顔も厳つく、街を歩けば10人に1人が泣く。 そんな父は車を運転しながら小刻みに震えている。 「・・・くるみちゃん・・・・・」 「は?なに?」 父はボソリと話し、母は常に怒鳴り気味。これが普通の光景だと言うのが、自分でも変だと思う。 「・・・くるみちゃん、抱きしめてぇなぁ」 「バカタレっ」小声とはいえ犯罪スレスレの言葉に、母は容赦ない鉄拳で対応した。 くるみはと言えば、このどこか狂った普通を見て、苦笑いを浮かべていた。 219 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 03 48 44 ID oBVbH7lN 黒崎家は、大きいか小さいかといえば、大きい。 安定を約束された収入ゆえ、黒崎夫婦は若くしてマイホームを買うことが出来たのである。それも駅に近く、割と栄えた場所にありながら、大きな庭まである。 ここまで考えて、我が家とは真逆だということを知った。 安定した収入に、確実に取れる休日、定時で帰るため、家にはいつも明かりが灯る。 対して、我が家はと言うと、最近は若干の余裕が出てきたとはいえ、相変わらずの経済危機。休日は不安定で、いつ休めるかなど予想もつかず、ギリギリまで残業をして帰ってくるため家はいつも冷たい。 あれ、俺って少しだけ可哀相だ。 「あれ、なんだろう」くるみが呟く。 黒崎家の前には、大きな人だかりが出来ていた。半分くらいは予想通りだが、もう半分は予想外だ。ある種、予想はしていたが。 「あぁ、来ました、帰って来ました」 「あの事故から奇跡の生還を果たした少女が、今」 「黒崎さん、今出てきちゃダメだからね」 「こっち、こっちに視線ください」 車はあっという間に囲まれ、車庫を目前にして動けなくなった。 あの事故を、テレビは連日、過剰な演出を加えて放送した。新聞やインターネット、あらゆる媒体を利用するのが今の手法で、なにかに限らず、メディアでくるみのことを見ないことは、ここ最近はない。 病院にも多くの報道陣が詰め掛けたが、姫を護るナイトを自称するだけあって、看護士と医者が築いた壁は強固なものだった。 それでも、どこから漏れるのか、退院の予定日や治療の進行度、挙句の果てには窓から外を覗く写真を撮られた事もあった。 今は窓にスモークがかかっているから大丈夫だろう。 221 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 03 32 ID oBVbH7lN 「お兄ちゃん・・・」ジャケットの袖が、ギュッと握られる。 メディアの猛攻の結果、くるみは軽い対人恐怖症となってしまった。知らない人に対してビクついてしまう。 「大丈夫」 くるみの頭を撫でた。 心の準備をしていると母が振り返り、お見舞いの品の中からりんごを取り出した。「持ってく?」 アホか、と一蹴してから深呼吸をすると、一気に車外へ飛び出た。もちろん、中を撮らせる暇は与えず、すぐに閉める。 一瞬、空気がどよめく。 自分では普通のつもりだが、人様から見れば、俺の目つきはよろしいものではないらしい。利用できるものは利用するのが俺の主義だ。 「テメェら、いい加減にしろよ」より目つきを鋭くする。難しい。 一度、マスコミに向かって本気で怒鳴ってしまったことがあった。俺自身がしつこくインタビューされるのはなんとか流せるが、くるみの心に傷を増やしたことが許せなかった。 結果、マスコミは退散し、ほんの少し、本当に少しだけ自重するようになった。翌日の朝のワイドショーでは俺が容赦なく虐められたが。 「そろそろ俺も我慢の限界なんだよ」頑張って声にドスを利かせる。一生懸命です。 だが、効果はなかった。 「あぁっと、少年です、あの少年が出てきました」 「地元では不良グループの頭を飾る、通称“大将”と呼ばれる少年が、今」 「おい、早くもう一台カメラ回せって」 今では俺も興味の対象の一つで、まったくの逆効果だった。やべっ、涙出てきた。 後ろで、ドアの開く音がした。マナーのなってない大人が開けたのかと思い、慌てて振り向くが、どうやら開いたのは運転席のようだ。 ゴリラが今、大地に立った。 一瞬で、空気が入れ替わった。 父が右手を高く掲げると、報道陣が一歩退く。何故か俺も下がってしまった。 手には先ほど母が差し出した、真っ赤なりんごが握られている。 「ぬぅあっ」瞬間、りんごが形を失った。 果汁が辺りに飛び散り、果実が父の肩に落ちた。 「いや、ちょっと待て、ちょっと待てって」どん引きする周囲をよそに、俺はただ、うわ言のように繰り返していた。 222 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 04 32 ID oBVbH7lN 「では、くるみちゃんの退院を祝って」 「乾杯っ」 小気味のいい音の後、皆が一斉にグラスを傾ける。黒崎家の庭を舞台に、立食パーティーが始まった。 父の知り合いが手配した葬式に来た人は、存外少なかった。だからこそ、俺はくるみの退院祝いの話を持ちかけることが出来た。 ただ、葬式のときに話したせいなのか、何故か坊さんまでもが出席している。よく見れば、あの黒服もいる。 葬式には出席していなかったくるみの友人にも呼びかけたところ、こちらは嬉しい誤算、多くの人が来てくれた。 だというのに。 「黒崎さん、大丈夫?」 「・・・ん」 「皆心配してたよ」 「・・・ありがとぅ」 くるみは家に着いてからずっと俺の後ろに隠れ、尻すぼみの返事ばかりしている。友達も心配はしているが、俺のことをあからさまに警戒して近づこうとしない。 マスメディアをそんなに信じちゃいけません。 ちなみに、玄関先で荒業を披露した父は、多くの人に囲まれ、賞賛を受けていた。なんだ、この差は。 りんごのネタバレをすれば、あれは母があらかじめ芯をくり貫いていたものだと、後で分かった。あの短時間で作業をした母こそ賞賛に値する。 その母はというと、隣で父を睨み続けている。 なんだか父の顔色が悪い。足元に目をやれば、母は地面に埋まるほど、父の足を踏みつけていた。あの歳で嫉妬とかどんだけー。 肩越しにくるみを見ると、俯きながら、左手は俺の腰辺りで服を摘み、右手はアイパッチを擦っている。 「恐いか?」 「えっと・・・」 「部屋に戻ってもいいんだぞ?」主役がいないのは寂しいが、それは優先度が違う。 「やだっ」思いのほか強い返事に驚く。「大丈夫、だいじょーぶだから」 すーはーすーはー、と可愛らしく深呼吸をすると、俺の右側に踏み出した。相変わらず、左手は俺の背にある。 パーティーが止まる。友達はかける言葉を探し、大人は遠目にこちらを見ている。赤い顔を俯かせ、小刻みに震えるくるみに、俺も固まった。 223 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 05 19 ID oBVbH7lN 沈黙を破ったのは父だ。 「この通り、この子は元気です」くるみの頭に手を乗せ、笑う。 それを皮切りにして、同級生の女の子が泣きながらくるみのもとへ走り寄る。よかった、よかったね、と。それを見ていた大人達は優しく微笑み、パーティーはまた動き出した。 俺は、また何も出来なかった。 頭に何かがズシリと乗る。父の腕だ。 「今のは、お前の仕事だな」 歯を剥き出しにして笑う父は、幼い頃に見たように大きく見えた。 あのぉ、という甘ったるい声が聞こえた。 くるみはすっかり主役として溶け込んだが、相変わらず俺から離れようとしない。 俺が空気を呼んで離れようとすれば、上目遣いでジッと見つめてくる。俺の服は今日だけでだいぶ伸びた気がする。 今はトイレに来たくるみを、こうして廊下で待っている。そこに、声がした。 見ると先ほど泣いていた女の子で、まだ目を真っ赤に染めている。 「トイレは今くるみが使ってるよ。洗面台はあっち」 「顔なんか洗ったらお化粧が落ちちゃいますよ」15歳で化粧、その事実を受け止めるのに少し時間がかかった。「そうじゃなくて、えっと、大将さん」 「大将じゃなくて・・・まぁいいや」 「最近、くるみちゃんとメールするとよくあなたの話しが出るんですよ。今日はお兄ちゃんが何を買ってきたとか、こんなことを話したとか。っていうか、大将さんの話しか出ません」 「そう」照れ隠しで、短く返事をする。 「それで・・・お二人は恋仲だったり」ドアが弾ける音がして、言葉が途切れた。 ドアを壁に叩きつけ、顔を真っ赤に染めたくるみが立っていた「ヨッちゃんッッ!!!」 「ごめんっ」ヨッちゃんと呼ばれた少女は脱兎のごとく逃げだす。 「気にしないでね?気にしなくていいからね?」 手をばたつかせながら必死に弁明するくるみは可愛かった。 224 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 05 58 ID oBVbH7lN パーティーの片付けも終わった頃、くるみが急に切り出した。 「お兄ちゃんの家に住みたい」 皿拭きを俺に押し付けて玄米茶を啜る母は、父に向けて、某プロレスラーの毒霧のように噴出した。父が椅子から転げ落ちる。 「それって東京に来るってこと?」うっさい、と母が一喝すると、悶えていた父はまた、静かに椅子に座りなおした。母がSなのは構わないが、父がMというのは素でイヤだ。 「ダメ、ですか?」無意識でやっている上目遣いは凶器。 流石の母も押されているようだ。 「でもねぇ、学校とか、色々あるでしょう」 母の言うことは当然だ。中学三年生という受験シーズンに引っ越すと言うのは、向こうで受験資格が得られるかどうかも危うい。それも、受験は目前まで迫っている。 この家のことや、通院。問題は山積みだ。 「まぁ、大抵のことは何とかなる。というか、できる」茶を啜りながら、父がポツリと言う。 今回の騒動を経て再認識したが、父はとんでもないチート野郎だ。ミステリーで言うなら探偵。登場人物の誰よりも、果ては読者よりも高い位置から物事にあたる姿は、正直ずるい。 「お前は、くるみちゃんをこちらに一人で残すつもりか?」 「それは・・・」父の問いに母が口篭もる。 今しかない。言え、俺。 「あの・・・」ゆっくりと手を挙げると、くるみを含め全員が見てきた。 225 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 06 36 ID oBVbH7lN 「俺、こっちに残ってもいいかな」言えた。よく頑張りました。 「却下」 「却下だな」 そんな二人してつぶさなくったっていいじゃないか。泣けてきた。 「あまり言いたくはないが、こっちはもうダメだ」 「何がさ?」 「マスコミもうろついてるし、周りの人がくるみちゃんを知りすぎている」 なるほど。確かに、今日は何とかなったが、時間がたてばすぐ、マスコミは父を俺と同じように扱う。それに、くるみの知り合いの気遣いが重荷にならないとも言い切れない。 そういった点では、知人のいない場所で再スタート、というのもアリかもしれない。無論、リスクは多い。 「今日は憲輔が大人を適当にあしらっていたからよかったがな」父が優しい笑顔を浮かべる。 「そうね、憲輔がいなかったら誰が我が家の家事をするか分からないもんね」話を一切聞いていなかったかのように、母は場違いなことを言う。 隣でくるみがクスクスと笑う。 「まぁ、大口叩いたからには、あなたにはしっかり頑張ってもらうわよ」 「おう、任せとけ」 夫婦の間で結論が出た以上、俺は従うしかない。むしろ、俺としては喜ばしいことだ。 「なぁ、くるみ」 「ひゃぅっ」小声で耳元に話し掛けると、くるみは奇声をあげた。 両親の視線が痛い。「手ぇだしたら殺すわよ、アンタ」 「わかってる、わかってるから」必死に弁解し、二人は渋々と引いてくれた。 くるみを見ると、顔を茹蛸のように赤くしていた。 「いいか?」頷いたので、また近づく。 「あぅ・・・」 「もしかして、今のがお願い?」 「あ、うん、そうだよ」 赤い顔のまま元気に頷く彼女を見て、そうか、とだけ言った。 ただいま、おかえり。それが普通になる日は近いかもしれない。 226 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 07 46 ID oBVbH7lN この数十日の間、俺はこの家に滞在していた。しかし、主不在の家というのはどうも気が引けて、俺はリビングのソファーで眠っていた。 「一緒に寝よう」 そう言われた時、葛藤はあったが、最近こってきた首が何もしていないのにポキリと鳴ったので、甘えることにした。 くるみの部屋はどこかシックな感じの木目調で、落ち着いた雰囲気を醸し出している。そこに、淡いピンクのクローゼットやガラスの机、白いベッドがあった。 白いベッドというのは、こうやって見るとあまりいいものではないように見えてしまった。 「最後に来たのはいつだったでしょう」ベッドに座りながらくるみが問う。 「去年・・・いや、一昨年かな」 二足歩行の猫のキャラクターが書かれた座布団に腰をおろす。 「違う。去年の8月9日」くるみは不満を顕にする。 「そうだっけか」 「『夏期講習がいやになった』って言って、いきなり来たんだよ」 「去年の俺は行動力があったなぁ」 夏期講習がイヤなのは確かだが、去年までの中学生特有のテンションがあったから成せた業だろう。っていうかそんなに近くないよな、岡山。 「変わらないよ。だって今回も一番にきてくれたもの」 「ああ、あれはな」来た、というより来させられたのだと言おうとすると、ふいに抱きつかれて言葉を失った。「くるみ?」 「嬉しかった。誰よりも早く来てくれて、誰よりも心配してくれて。あんなに取り乱したお兄ちゃんは初めて」 顔のすぐ横のくるみの顔がある。細い腕は俺の肩を包み、全身は俺へと委ねられている。顔が沸騰するのがわかった。 「さっきも残るって言ってくれた。ありがとう」 抱き返そうかしまいかと腕が空を漂っていると、くるみの方からゆっくりと離れた。 「大好きだよ、お兄ちゃん」 目の前の少女は美しく、どこか儚げだった。 「無理、するなよ」頭を撫でてやると、目を細めてまた、大好き、と言ってくれた。 227 :Tomorrow Never Comes4話「ひとつめの嘘」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/23(金) 04 08 29 ID oBVbH7lN くるみの誘いを押し切り、床に布団をひいて眠ることにした。 幸せそうに眠るくるみに、俺は一つ嘘をついた。 叔母さんは生きている。 ただ、あくまでそれは道徳に則った言い方で、正しくは生死の境を彷徨っている、だ。それも、“死にかけている”のではなく、“死にきれていない”というほうが正しいと医者は言った。 肉体的には死んでいて当然の状態のはずなのに、心臓は動いている。 くるみを一人にしまいとする強い意志の権化か。くるみが両親と比べて軽傷で済んだのも、叔母さんが庇うように覆い被さったお陰だという。 俺は久方ぶりの母をみて、少し尊敬した気持ちになった。 周りの大人はこの事実を知っている。だから今日、俺は出来るだけ大人をくるみから遠ざけ、ここ数日、彼女にニュースの類は見せていない。 医者は敢えて最も近しい俺に伝える役を与えたのだが、完全な人選ミスで、結局俺は言えずに何時の間にかタイミングを失った。 また一つ、いや、二つ、俺は罪を背負った。 それでもいい。俺はこの子を支えると誓った。俺に出来ることは俺にしか出来ないこと。医者の言葉が頭を過ぎる。 「とはいえ、いつかは言わなくちゃな」叔母さんが蘇生しようが死亡しようが、だ。 ふいに、昼間の少女を思い出す。 “お二人は恋仲だったり・・・” 「・・・いかんいかん」 揺らぎかけた誓いを建てなおす。聞こえてきた除夜の鐘が煩悩を払ってくれるのを願う。 この子を支えてくれる人が現れれば、喜んで身を引こう。 かつての罪を償えない限り、俺には愛する資格も、愛される資格もないのだから。
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タグ 作品名し 漆黒のシャルノス -What a beautiful tomorrow- 曲名 歌手名 作詞 作曲 ジャンル カラオケ OP dorchadas Rita Rita Blueberry&Yogurt かっこいい ED Saudade Rita Rita Blueberry&Yogurt 感動
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349 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 34 21 ID bqVkUjNx 幼い頃、俺は糸抜きが好きだった。 衣服のほつれた部分を見つけては、飛び出た糸を抜けるまで引っ張った。縫い目がするすると崩れていき、ほころびが生まれる。何故かは分からないが、それを見ると満足した気持ちになったのだ。 見つけては迷わずに引き抜き、怒られようがお構い無しだった。 幼い俺は、16歳になった自分がほつれを前に何もできずに立ち尽くしているのを、どう思うだろうか。 朝から席についてはいるが、何もしていない。教科書とノートは開いているが、それだけだ。こぼれるようにため息をつくと、前の席の人が脅えるように身震いをした。 ふと窓の外を見ると、7月の雄大で清々しい空に、ポツポツと雲が浮かんでいる。何か理由があるでもなく漂う雲は、どこか間抜けだ。 今度は教室を見渡す。誰もが、先生がつらつらと黒板に書いた文字を無我夢中でノートに写している。 あの佐藤や遊佐までもが必死で写しているのだから、もしかしたら人生の悩みを一瞬で晴らすような方法が書いてあるのかもしれない。 先生が何か質問は、と言ったので手を挙げる。 「ん、斎藤君」 「なんで浦和先輩は殺されたのですか?」 全てのペンが止まり、教室中から音が失われた。誰もが恐る恐る俺を振り返り、その中で遊佐が可哀相な物を見るような目を俺に向けている。 そうか、俺は今、同情してもらってるのか。ありがとう、みんな。 「保健室でゆっくり休んできなさい」 ありがとう、先生。 とはいえ、バカ正直に保健室へ向かう気にはなれない。 生徒会室へ向かう途中、なんとなしに携帯を取り出した。『不在着信99件 メール118通』と表示されたディスプレイをぼんやり見ていると、またメールが届いた。中身を見ることなく、ポケットにしまう。 「サイレントじゃなきゃやってられんな」音なし、バイブなしの状態をこれほどありがたいと思ったことはない。 浦和先輩の死体が発見される数日前に起きた小さな事件は、俺とくるみと窪塚さんの心の内だけにしまわれている。 ただ、変化は確かに顕在化しており、この携帯の状況がそのまま今の現状を表していると言っても過言ではない。 くるみの俺への依存は目に見えて悪化している。睡眠時だろうが食事時であろうが、可能なときはいつでも傍にいるようになった。一度、風呂にも来ようとしたが、さすがに止めた。 こうして学校などの強制的に引き離される場合は1分置きの電話、授業中はメールが送られてくる。罪悪感からなのか、俺はくるみを避けることも、拒絶することもできずにいる。 一方、窪塚さんはといえば、休み時間のたびに俺の教室を訪れては同じように訪れるくるみと牽制をしあう。 出来るだけ避けようとはしているが、効果がないこともいい加減分かってきて、今では受け流すようにしている。メールや電話もほぼ同じペースで、ここ数日の間に届いたメールの9割はこの2人が占めている。 残りの一割は佐藤との部活の話や、姉が友人を連れて近々帰省するだとか、その程度だった。 肝心の俺は、今まで通り、やはり何もしていない。“魔物の巣”に魂を置き忘れてきたのか、思いのほか図太く、それも冷静だ。授業も部活もかつての惰性で行ってはいるようなものだが、それでもそこまで支障はない。 350 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 35 02 ID bqVkUjNx 幼馴染・・・いや、元幼馴染が昔、チェス盤の端から端までワープをする、という技を思いついたことがあった。 思考的なゲームが一変、先攻を取った方が勝つ、という趣旨の分からないものになってしまったのを今でも覚えている。 現在の俺の状況は、言ってみればそんな感じだ。ノミの如く小さい俺のハートに、あの事件は衝撃的過ぎた。一気に容量限界を突破し逆の空っぽに戻ってきた、そんなところか。 薄々勘付いていたとはいえ、核心に触れるのを意図的に避けていたくるみの狂気的な依存。予想だにしなかった窪塚さんの一面。現状をもってしても遠くの話に感じてしまう。 同時に、これは全て俺が引き起こしたことではないか。そんなことばかり、ここ数日は考えている。 くるみにもっと優しく、1番に気遣ってやってればここまで狂わなかったのか。 窪塚さんの気持ちにもっと早く気付けば、彼女も壊れなかったのだろうか。それはすなわち、先輩も死ななかったという結果も生んでいたかもしれない。 「俺の、罪」感情のない自分の声に、少しだけ驚く。 ふいに、はるか昔、幼い自分が犯した罪が脳裏を掠める。 夏の日、親に抱かれた俺は、連れ去られるあの子を助ける術はおろか、力も持ち合わせていなかった。 遠ざかる車は夏の陽炎。ゆらめきと共に消える。 高き太陽は傲慢。地に這いつくばることさえ出来ない俺を笑う。 俺がその光景を知っているはずがない。そもそも、見ていたという確証もない。だが、脳は鮮明に、幾度となく俺に示す。 ━━忘れることなかれ、己が大罪。 鍵を開けようと差し込んだ時、中から声がした。 「開いてますよ」 そのまま引き返し素直に保健室へ行くという選択肢もあったが、俺自身、彼女には用があったので中へ入った。 声がしたからには当然声の主が、この場合は窪塚さんが生徒会室の中にはいた。奥の窓に寄りかかるようにして立っている右手の人差し指には、彼女が勝手に作った合鍵がぶら下げられている。 「窪塚さんもサボり?」 「りおちゃん、って呼んでくれなきゃ返事しません」 以前と変わらないように見える窪塚さんは、昔のままの屈託のない笑顔を見せる。俺は顔を逸らし、無言で入り口の横の棚に背を預け、床に座った。 「・・・意地悪ですね、先輩」メールも返してくれないし、と彼女は口を尖らせた。 「文字を打ってる途中でメールが来れば、誰でもその気をなくすよ」 「あの女からの、ですか」 何時の間にか、窪塚さんは俺の前に立っていた。蛍光灯を背に俺を見下す姿は恐怖を感じるものの、生憎この手の恐怖には身体が麻痺してしまっている。決して喜ばしいことではないが。 「人のことを“あの女”と言うのはよくない」 「・・・どうしてっ、どうして私のことは見てくれないのに、あの女・・・黒崎くるみばっかり構うんですかっ」 「家族だからなぁ」 351 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 35 28 ID bqVkUjNx 「家族っ・・・私が1番嫌いな言葉・・・・・」歯軋りをしながら、彼女は呟く。「私だって、私だって・・・」 毎度のことだが、俺は状況がまったく読めない。こんなとき、人生の攻略本を持つ父なら一発解決なのだろうが。 「せっかくだから、いくつか訊いておきたいことがあるんだけど」 所在なさ気に呟くと、窪塚さんは表情を明るくし、俺の前にしゃがみこんできた。スカートの中身が見えそうな体勢なので、視線を横に向ける。 「はい、なんでも答えますよ。まずはスリーサイズからいきますか?」 「いや、いい」そんなに目を輝かれても困る。「えっと、凄くバカらしくてマヌケなことを言うよ?」 「好きな体位でも訊きますか?」 「・・・窪塚さんは、その、もしかしなくても俺のこと」 「好きですよ」 あまりにもアッサリと答えられ、恥らう自分がアホらしく感じてしまった。「ああ、そう」 「私は先輩のことがだぁい好き。先輩のためだったら何でも出来ます。朝はまず優しくキスで起こして、それから先輩にスッキリしてもらって、ご飯作って掃除して・・・ あ、ワンちゃんのお散歩もしますよ。お弁当も作りますし、学校ではメール1つですぐ駆けつけますし、いつでも先輩をスッ」 「もういい、もういいから」これ以上聞くとスッキリという単語の意味を深く考えてしまいそうになる。 こうして笑っている彼女を見ると、わからなくなってしまう。 彼女は浦和先輩を殺した。あの時の会話から、なんとなくそれは予想できる。要するに、俺を振り向かせるため、俺が一番気遣う存在であるくるみと同じ土俵に立とうとしたということだろう。 なんとバカな真似だろうか。どんな理由があろうと、人の命を奪っていい理由にはならない。ましてや、それが俺のためといっては、先輩も浮かばれない。 「もう1つ、窪塚さんはいつから俺のことを?」 「ずぅっと昔、まだ私が私じゃなかった頃からです」 「・・・よく分からない」 「いいんです、私はわかってますから」 ━━先輩が忘れても、私は覚えてますから 小さく呟いた彼女の顔は寂しげで、遠い過去を見ているような憂いを含んでいた。それ自体に見覚えはないが、どこかで似たものを見たような気がした。 「・・・ということは、浦和先輩と付き合ってたのは」 「ああ、全部嘘ですよ」 あっけなく、まるで数学の解答を教えるように軽く言い放った。ああ、そこは3ですよ。そこはx=7ですよ。 「安心してください、アイツはもちろん、誰にだって私の純潔は捧げていませんから」 「なんで、そんなことまでして」 「先輩の傍にいるためですよ」艶やかな笑み浮かべ、俺の首へと手を回す。「捜すの大変だったんですよ?」 覆い被さってきた彼女の豊満なバストが目の前で揺れる。大きく開かれたワイシャツから、胸元がちらつく。 「せんぱぁい・・・」 気分が悪くなるほどの甘い声に、案の定気分が悪くなった。 「やめてくれ」思いのほか強くしがみ付く彼女を、立ち上がる勢いと同時にひっぺがしす。 手加減が出来なかった。尻餅をついた窪塚さんは立ち上がった俺を睨みつけるが、その瞳は俺より向こうを見ているのが分かった。 「あの女・・・アイツが、アイツさえいなければぁっ」 俺にも限界は、ある。 「いい加減にしてくれよっっ!!」 しかし、1つだけ叫んだ俺は、糸が切れた人形のようにその場へとへたれこんだ。 「くそっ・・・何で、なんでこんなことになったんだ・・・・?」 さっきまでは答えが出てたはずなのに、記憶に靄がかかったように思い出せない。 塞ぎこむ俺の耳に、残響のようにあの甘ったるい声が響いていた。 352 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 35 57 ID bqVkUjNx 「ったく、勘弁して欲しいぜ」 体育館へ続く渡り廊下に、俺は横たわっていた。 何故? 分からない。頭の横に座る佐藤に目をやると、彼はわざとらしいため息をついた。 「お前、熱中症で倒れたんだよ」 夏本番が近づき、体育館はまるで蒸し風呂のように暑い。ましてや、今日のように半面をバドミントン部が使ってると、窓が開けられないので余計に酷い。 そんな中部活をしていると、決まって倒れるやつが出た。それが今回は俺だったということか。 ほれ、と差し出されたスポーツドリンクを受け取ると、上半身を起こし、一気に口に含む。冷たい水が体中を駆け抜ける。 「最近おかしいぞ、お前。昨日も保健室行ったまま帰ってこなかったし」 「怪獣ホルスタインとの対決が思いのほか長引いてね」 「おお、なんか素敵な怪獣だな」 「変われるなら配役を譲ってやりたいね」夏の強い日差しの中、時折吹いてくる風が心地よい。 結局、俺がどうやって窪塚さんから逃げたのかは曖昧だ。気が付けば放課後で、何時の間にか帰宅していた。 ただ、今日こうして五体満足、体調万全でバレーに挑めているということは、上手いこと逃げ切ったのだろう。よくやった、昨日の俺。 休日の部活というのはそれなりに憂鬱だが、一度始めてしまえば楽しいもので、思わず熱中してしまう。その結果、熱中症にかかるというのは多少病的に、そして親父ギャグのように聞こえる。 だが、悩みを抱えているときの運動ほど清々しいものはないのだから、仕方ないと言えば仕方ない。 今日、窪塚さんは来ていない。浦和先輩の件で重要参考人として何度目かの事情聴取を受けているらしいのだが、今まで通り恋人だったから、という理由だろう。 確証はないが、彼女が警察に疑われるようなミスをするとは到底思えない。 ちなみに、佐藤も数日前に警察へと赴いていた。死体発見の前に浦和家を訪れたことで、白羽の矢が立ったのだ。 実際、浦和先輩の家を訪れたのは俺なのだが、先輩のお母さんは佐藤君と言い張った挙句、佐藤の顔を見てこの子です、と言い切ったらしい。天然かと思ってたがあれはただの呆けだな、そう佐藤はいきっていた。 その上、おばさんは同行していた少女の名前を『くるり』だと言っていたらしい。警察が気を利かせて、くるみでは?、と言っても意志を曲げなかったそうだ。 もしかしたら俺たちを庇っているのかもしれない、と考えたが理性が一瞬で却下した。そうする義理がない。 しかも運がいいことに、この近くに『くるり』という名の少女がいたらしく、警察はその子を捜索しているそうだ。その子からすれば、運が悪いにも程がある。いつか会えたらしっかりと謝りたいと思う。 また、携帯の破片や指紋などで割り出されるのではないかとも思ったが、俺たちに捜査の手が伸びることはなかった。 くるみの前で何気なく口にすると、破片は掃除機で吸った上で中身のパックごと回収し、指紋のつきそうな位置は手持ちのウェットティッシュで拭いたのだと、胸を張って誇らしげに話してくれた。 そう言うならもちろん、髪の毛の一本一本まで回収したに違いない。何故ウェットティッシュを持っていたのかと訊くと、そっぽを向いて黙ってしまった。 安心すると同時に、この時からくるみは異常だったのだと分かり、彼女を御せなかった自分を責めた。 「何があったかは訊かねぇ」佐藤がぽつりと呟いた。「くるみちゃんとりおちゃんが変なのは、流石の俺でも分かるよ。俺にできることがあったら言えよな」 「ああ、サンキュ」 気にすんなよ、と笑う佐藤に、何の感情も抱いていないことに恐怖した。 353 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 36 35 ID bqVkUjNx それからバカ話をしていると、背後から呼ばれ、振り向いた。そこには、大川俊先輩がいた。 「大将、大丈夫かい?」 先輩はいつも通りの笑顔で俺を覗き込んできた。 「すいません、もう大丈夫っス」 「ああ、無理しないでいいから、ゆっくり休んで」 俺の肩に手を乗せ、地面に押し付けるかのように無理矢理座らせると、隣に腰を下ろしてきた。 体育館のほうから足音がしたので見上げると、通路を通っていくバドミントン部の女子が、邪魔くさそうに俺たちを見下して通り過ぎていった。 「調子悪そうだね、最近」それを気にもとめずに、先輩は言う。「やっぱ、好紀のこと?」 「遠からずも近かからず、ってとこです」 「直接の原因じゃない?」 「ええ、まぁ」 確かに、直接ではない。なんとなく申し訳ない気持ちになった。 「なら安心だ」 「どういうことです?」佐藤が先を促す。 「もし好紀が原因で落ち込んでるとしたら、きっと、好紀はそんなの望まないよ。『テメェら、同情するなら生き返らす方法でも考えやがれ』ってね」 「ははっ、確かにキャプテンなら言いかねない」 佐藤に合わせて俺も笑った。「ただ、『同情しろよ、薄情者っ』とも言いそうっスよね」 「ああ、言う言う」 「好紀なら言うなぁ、きっと」 3人は笑うのが同時なら、ため息をつくのも同時だった。 「もういねぇんだな、キャプテン」 不意に、叔父さんと浦和先輩が重なった。立場は違えど、人が死ぬということは残される人にとって、根本的にはなにも変わらないのだと、ようやく理解した。 354 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 37 03 ID bqVkUjNx 先ほどとは逆方向から足音が聞こえてきた。しんみりしていたのと、さっきの経験から顔を挙げるつもりがなかったのだが、すぐ近くで足が止まったので、思わず目をやる。 「・・・なぁにしてんの」呆れ顔の遊佐がいた。 「なんだ、遊佐か」 「ちっ、遊佐かよ」 「なんだとは何よ、なんだとは」 「なんで舌打ちはスルーで俺に絡むかなぁ」明らかに佐藤のが悪い。 遊佐は少し息が上がっている。多分、午後からの練習に向けて、外でウォームアップしていたのだろう。 「よくやるねぇ、遊佐ちゃん」 「あたし、中途半端は嫌いなんです」営業スマイルで答える遊佐の額には前髪が張り付いている。 夏場なのだから必要ないだろうに、Tシャツが肌にくっつくまで汗をかいている。ここまで真剣に打ち込んでいるのは、部活内では遊佐だけに違いない。 遊佐は俺へと向き直り、人差し指を突き立ててきた。「アンタには負けたくないのよ」 「俺は勝負した覚えはない」 「アンタが覚えてなくても、あたしは覚えてるの」 いつか言っていた、大会でのことだろうか。 「っていうか、そもそもポジションが違う」 「そう、それなのよっ。アンタ、何で今になってポジション変えたの?あたしの努力が台無しじゃないっ。どうしてくれるのよっ」 「責任とって結婚しなさいよ」裏声でちゃちゃを入れた佐藤が蹴られる。 「どうして、って言われても、チームのためとしか」 概ね、間違ってはいない。 冬休み、及び3学期中の大会と練習試合で、我が校はなかなかの好成績を収めた。その中には、リベロとして新たな仕事をこなす佐藤の活躍も含まれていた。 しかし、そのことからますます俺の存在意義は打ち消され、正直、俺はやる気をなくしてしまっていた。くるみに励まされながらもやる気なく続けていたある日、俺は顧問の高橋先生にポジョションの変更を提案された。 確かに、現3年生はスパイクに関しては粒揃いだ。2年も、浅井とシバちゃんが、自分たちの代になれば佐藤がアタッカーに転向する事だって可能だ。 とどのつまり、この面子に俺は見劣りするのだ。肩を落とすほどにうなだれる俺を見て、先生は、セッターをやらないか、と訊いてきた。 アタッカーを大砲を打つ人と例えれば、セッターは弾を込める人。弾を込めなければいくら点火しようが城壁は崩せない。高橋先生はそう続けた。 うちの部活にセッターは大川先輩しかおらず、比較的丈夫で健康な彼だが、これから先に万が一がないとも言い切れないし、何より3年生だ。 また、先生は俺の右足首の障害も見抜いていた。それが原因で部活を休んだことはないし、練習中に痛みで抜けたこともない。 しかし、先生からすればスパイクを見れば一目瞭然らしく、今まで俺を試合に出さないのもそれを気遣ってくれた部分が大きいようだ。確かに、アタッカーと比べてセッターは脚への負担が少ない。 さまざまな要因から、先生は俺がセッターになるのを最良とした。俺に、断る道はなかった。 「大将の上達は凄まじかったなぁ」俺の存在が霞むくらい、と先輩はおどけた。 「まさか、足元にも及びませんって」 「またまたぁ」 肘で小突かれる俺を、遊佐が納得いかないという顔で見ている。 「でもなぁ、遊佐。コイツ、マジで努力してたんだぜ?先生に頼んで遅くまで残ってたりさ」 「知ってるわよ、そんなの・・・」 俯いてしまった遊佐に、誰もがかける声をさがしていたら、アイツが来た。 「なんだよ、遊んでんならさっさと帰れよ」相変わらず嫌な声だ。 355 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 37 31 ID bqVkUjNx 体育館から出てきたのは同じ2年生の浅井叶(あざい きょう)。浦和先輩のいない今、実質的なエースである。 部活中だというのに崩れない髪形にはどのようなワックスを使っているのか、訊いてみたいものだ。背が高いくて体格もがっちりしており、威圧感がある。 「ああ、悪いな、すぐ戻るよ」 「やる気ねぇなら帰れよ、邪魔だから」 コイツに関しては、俺のリミッターも緩くなる。ずいっ、と前に出る。 「アンタねぇ」遊佐が。なんでだ。 「なんだよ、女バレ」 「女バレじゃないっ、遊佐杏だっ」 「別にテメェの名前なんかどうでもいいよ」 「なんですってぇっ」 「遊佐っ、もういいよ」今にも飛び掛らんとする遊佐を制する。 「離しなさいって、一発殴んないと気が済まないっ」 「おちつけよ、遊すぁ」援護に来た佐藤の顔に裏拳が入る。それを見た大川先輩は一歩退いた。 「アンタは怒んないの!?憲輔っ」 「遊佐が怒るから、タイミング逃した」 「あ・・・ぅ」 途端に遊佐の力が抜けていく。抑えていた腕を離すと、顔を逸らして、ごめん、と一言言って走り去ってしまった。 それを見送ってから、気合を入れて浅井に向き直る。が、浅井はあからさまに呆れた表情を向けていた。しかも、佐藤や先輩までもが同じ顔をしていたので、どこか空回りした気分になってしまった。 「あれ?」 「アホくせぇ」 「先輩、そろそろ戻りますか」 「そうだね」 先輩は頷くと、先輩は佐藤を連れて体育館に入っていった。置き去りの俺と、呆れた浅井だけが残される。 「え、なに、この状況」 「アホくせぇ、ってことだよ」 振り返り、自らも戻ろうとした矢先、浅井は思い出したように立ち止まって振り向く。「そういや、くるみちゃんこっちに来てるのか?」 「物凄く今更だが、来てるよ」 「お前が毎日一緒に帰ってるの、くるみちゃんか?」 「ああ」 「そうか」 浅井は少し考え込んでから、口を開いた。「目はやっぱり」 「見えてない。治る見込みは、ゼロではないよ」 「・・・今度、お見舞いに行ってもいいか?」 「ああ、きっと喜ぶ」ただ、と続ける。「できれば、お見舞いじゃなくて、遊びに来てくれると嬉しい、くるみも」 「だよな」どこか幼げな、懐かしい笑顔があった。 356 :Tomorrow Never Comes9話「ほころび」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/03/01(日) 00 38 38 ID bqVkUjNx 浅井は俺の幼馴染だった。“だった”というのも、とあることから確執が生まれてしまったからだ。 当時から俺はどこか客観的で、浅井も今と同じくガキ大将タイプだった。家が近いこともあって俺たちは毎日のように遊び、くるみが訪れたときは3人で裏山やら川などで日が暮れるまで遊んだものだ。 浅井が引っ張り、俺がフォローする。そうやって俺たちの関係はいつまでも続くはずだった。 中学に入り一緒にバレーを始めると、より一層仲は深まった。浅井はぐんぐんと身長が伸び、運動、勉強、恋・・・この頃には、俺が勝てるものは1つもなかった。 それでも、地味な俺を親友と言ってくれる浅井が好きで、誇らしかった。 だから、あの日俺は、親友のために闘った。せめてもの恩返しと願って。 名門校への推薦が取れた浅井は、いつにもまして上機嫌だった。そんな浅井を見ていると、まだ受験の真っ最中であったにも関わらず、俺は祝ってやりたくなって街へと繰り出した。そして、不良に絡まれた。 スポーツでは右に出るもののいなかった浅井とはいえ、3人相手では歯が立たなかった。這いつくばる浅井を見て、俺は咄嗟にその前へと踏み出した。 そこからの記憶は曖昧で、ただとにかく殴られ続けたのは覚えている。我慢強さに定評のある俺とはいえ、キツかった。だが、親友のためと思えば、膝が屈することは決してなかった。 そのうち、騒ぎを聞きつけた人たちが警察呼んで、全ては丸く収まった。はずだった。 理由はどうであれ、喧嘩をしたことで、スポーツ名門校への推薦を取り消された浅井は失意に暮れた。俺はただひたすらに謝ったが、彼が口にした言葉は、あまりにも意外だった。 ━━なんで助けた。 なんでお前が俺を助ける。逆だろう。お前はいつも俺の陰に隠れてればいいんだよ。無能なお前を、俺が構ってやる。ただそれだけで俺の株が上がるのに。なに余計なことしやがる。憲輔のくせに憲輔のくせにっ。 以来、浅井とは今日まで、一度も会話をしていなかった。同じ高校を受けたことも、入学式の当日まで知らなかったぐらいだ。 結局、浅井は俺を友達だと思っていなかったのか、自暴自棄になった結果なのか、それはわからない。今の今まで俺だってコイツを嫌っていたのだ。 どちらだろうと、今更変わらない。それでも、この会話はなにか、きっかけのようなもになる、そう思えた。 「い、一応言っとくけどな」 背を向けたまま、浅井が言う。声は上ずっている。 「俺は、まだ、あの子のこと、好き、だからな」 「あぁ、そういやそんなことを昔・・・」 ふと思い出す。河川敷、芝生の公園、夏、爽やかな風、くるみの誕生日。浅井がくるみのことを好きだと言い、くるみも頷いたあの日。 「よく覚えてんな、お前」 「俺は、本気だよっ」勢い良く振り向いた浅井は、顔を真っ赤に染めていた。 「くるみに言えよな、叶」 さりげなく言ったつもりだが、浅井・・・叶は呆気に捕られた顔をしていた。 一瞬の間が開き、笑う。 「わかってるよ、憲輔」 不器用でぎこちない光が、俺たちの世界に射す。 ほころびが、手には負えない大きさになっていることにも気付かないまま、俺は笑っていた。
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【登録タグ D TRI-ReQ 初音ミク 曲】 作詞:MNW(TRI-ReQ) 作曲:Hoso-Q(TRI-ReQ) 編曲:Hoso-Q(TRI-ReQ) 唄:初音ミク 曲紹介 「あなたの夢はなんですか?」 子供の頃に描いてたイメージ。リタイアするのは簡単です。 あきらめの悪い人が勝ち残る『夢の世界』。 「叶わない夢」だとしても、夢見心地でいきましょう。 Power to make your dream come true. この曲を聴いた人が、一人でも「大きな夢」を叶えてくれたら嬉しいです。(作者コメ転載) TRI-ReQ名義での8作目。 古墳P の『お願いShootin Star』は、この曲の姉妹作。 歌詞 時代を超え 想い駆け抜けて さぁ、あの時感じた「感激」を届けよう! できるわけがないとか 絶対に無理だとか 勝手に思ってればいい 私はマイペースなんだから そりゃ、たまの失敗で凹んだりもするけど 少しずつ少しずつ 近づいて行けばいい 『私の夢!』 世代を超え 刻を駆け抜けて さぁ、あの日に誓った「感動」を届けよう! 何時になっても良いよ この世界の子供たちへ 夢の続き語ろうよ 溢れる愛を描いて 『届け!私の創り出す世界!』 時代を超え 想いときめいて さぁ、あの時感じたこの想いを! ハードル超え 願い羽ばたいて 今、あの時震えた「感激」を届けよう! 時代を超え・・・ 世代を超え・・・ 『輝く夢!』 挫けないで 迷い突き抜けて ほら、あなたの描いた、そのイメージ! 恐れないで 一人躓いても ねぇ、あの日に誓った「感動」を届けよう! POWER TO MAKE YOUR DREAM COME TRUE. POWER TO MAKE YOUR DREAM COME TRUE. コメント ミクさんめっちゃゴキゲンですやんw -- 名無しさん (2011-10-08 19 54 11) 名前 コメント
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「Let s Go!! 〜Sing for Tomorrow〜」は、『P s LIVE! 05 Go! Love Passion!!』のテーマソング。 基本情報 1コーラスVer配信初出日 2017年11月8日 CD初出日 2017年11月19日注1 アーティスト 竹達彩奈三森すずこ内田真礼MICHI 発売元 ポニーキャニオン 作詞 こだまさおり 作曲 大石昌良 編曲 やしきん Guitar 奈良悠樹 (F.M.F) Bass 工藤嶺 (F.M.F) Drums 山内"masshoi"優 All Other Instruments やしきん (F.M.F) Programming Producer 鎗水善史 (PONY CANYON)野島鉄平 (PONY CANYON) Director 澤畠康二 (PONY CANYON)横尾勇亮 (PONY CANYON) Recording Engineer 井野健太郎 (F.M.F)茅野圭佑 (maruni studio)西沢栄一 (studio Rine)藤浪潤一郎 (PONY CANYON) Mixing Engineer 井野健太郎 (F.M.F) Mastering Engineer 多田雄太 (PONY CANYON) Mastering Studio PONY CANYON Mastering Room ※初出CD準拠 収録CD 発売日 商品名 DiscNo. TrackNo. 楽曲名 歌唱 2017年11月19日注1 P s LIVE! 05 Go! Love Passion!!『Let s Go!! 〜Sing for Tomorrow〜』通常盤:BRCG-70018 - 1 「Let s Go!! 〜Sing for Tomorrow〜」 竹達彩奈三森すずこ内田真礼MICHI 2 「Let s Go!! 〜Sing for Tomorrow〜 (Instrumental)」 - タイアップ ライブイベント『P s LIVE! 05 Go! Love Passion!!』テーマソング 動画 脚注 注釈 注1:収録CDは『P s LIVE! 05 Go! Love Passion!!』のプレミアムチケットの特典。発売日には当該チケットが参加者の手元に到着したと思われる日付のうち最も古いものを記した。
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Will the living corpse have dream of tomorrow ? サークル:回路-kairo- Number Track Name Arranger Lyrics Vocal Original Works Original Tune Length 01 一期一会 megane 毛 556t 東方永夜抄 竹取飛翔 ~ Lunatic Princess [05 17] 02 三者三様 毛 毛 556t 東方永夜抄 千年幻想郷 ~ History of the Moon [03 11] ヴォヤージュ1969 03 六道輪廻 KENTO 毛, KENTO, megane 556t 東方永夜抄 プレインエイジア [05 33] 懐かしき東方の血 ~ Old World 04 十月十日 megane, 毛 556t, 毛 556t 東方永夜抄 恋色マスタースパーク [03 15] 05 四面楚歌 megane, 毛 megane 556t 東方永夜抄 狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon [02 59] シンデレラケージ ~ Kagome-Kagome 06 二者択一 KENTO, 毛 毛, KENTO 556t 東方永夜抄 少女綺想曲 ~ Dream Battle [04 19] 07 三千世界 毛 毛 556t 東方永夜抄 月まで届け、不死の煙 [04 33] エクステンドアッシュ ~ 蓬莱人 08 来世、また会おう megane - - 東方永夜抄 ヴォヤージュ1970 [02 16] 詳細 コミックマーケット80(2011/08/13)にて頒布 イベント価格:1,000円 ショップ価格:1,569円(税込) レビュー 名前 コメント
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154 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 47 21 ID BKFgU1gH 「はい、じゃあ各自念入りにダウンしといて。レギュラー外の一年は手伝うか片付け。最後の子は戸締りをして、一階のラウンジに集合」 今日も部活が終わった。相変わらずの不完全燃焼で、不満が募るばかりだ。 季節は冬、12月。ごく普通に中学を卒業した俺は、ごく普通の高校に、特に何の波乱も無く入学し、大きな変化も無いまま一年が終わろうとしていた。 現に、今年の授業は今日で収めとなり、明日からは冬休みが始まる。冬休みはカレンダーで見るよりもずっと早く、あっという間に年が明けるだろう。 「さて、と」 散らばったボールを籠に戻すと、俺は体育館を見渡した。梅ちゃんが舞台のほうへと向かったので、おそらくモップを持ってくるはずだ。 シバちゃんがコーンを片付けており、続いて、ネットを下ろしている佐藤の姿が目に入ってきた。小走りでそちらへ向かう。 「お、悪いな」俺を見て佐藤が笑ったので、気にすんな、と言って俺も笑った。 俺は中学校からずっとバレーボールを続けており、自慢じゃないが中学生の頃は主将を勤めていた。 ただ、高校では普通にやれれば満足なので黙っているつもりだったが、アイツが━━浅井の野郎が新入部員の歓迎会でわざわざ言いやがった。 幸い、悪い方向には転がらずにすんだが。 「たいしょ~。マッサージして~」 「あ、俺も、大将」 「はいはい。今片付けっスから、ミーテの時にしますよ」 結果、これだ。念のため言うが、俺の名前は“大将”ではない。 主将をやっていたことが転じ、気付けば周りの人間は俺をそう呼び始めた。まぁ、これだけなら一向に構わないのだが、これに託けて、何かと俺に甘えてくる。 もしそれを断るものなら、「え~。だって主将やってたんでしょ」という意味のわからない責任を押し付けられる。1年生は5人もいるのだから、俺以外にも頼めばいいだろうに。 「モテモテだな、大将」佐藤登志男(さとう としお)はネットを支えるポールによじ登り、高い位置の紐を解きながら言ってきた。 「お前まで言うかよ」 「まあまあ、プラスに考えろよ。先輩に好かれてるなんてオイシイじゃないか」 「先輩だけなら、な」 事実、先輩だけではない。 我が校の部活は互いに関係が深い部活が多く、特に同じ競技なら尚更である。 男子バレー部と女子バレー部もその例に漏れず、非常に友好的だ。健全な高校男児なら手放しで喜ぶところだが、今の俺には不愉快としか言い様が無い。 部活同士で仲がよければ当然、部活の枠を越えてカップルが出来たりもする。 バレー部では、二年の池松先輩と城崎先輩がそれにあたり、主に二人を掛け橋にして関係が築かれている。“大将”は、その掛け橋を本人の知らぬ間に渡ってしまい、橋から橋へ、部活から部活へと一人歩きを始めたことに気付いた時には、もう手遅れ。 学年どころか、学校の大半の生徒に知れ渡ってしまった。『斎藤憲輔(さいとう けんすけ)=大将=なんでも頼める人』という式は、もう崩せそうにない。 155 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 49 31 ID BKFgU1gH 佐藤がネットを取り外すと、いつのまにか戻ってきたシバちゃんがネットを丸め始めた。 俺と佐藤はポールを運ぶ事にした。最近のはアルミだかなんだかで作られており非常に軽いのだが、歴史が深いらしいこの学校は未だに鉄製のものも所有し、男子バレー部はそちらを使わされている。 顧問曰く、これも筋トレの一貫らしいが、女子バレー部の若いコーチに言い寄られ、最新のは女子が使っちゃってください、と顧問が言っていた現場を俺は見ていた。あの時のイイ笑顔は忘れられそうにない。 「ほっ、と」若干、ふらつきながらもポールを倉庫の定位置に置いて固定した。横でも佐藤が同じ作業を終え、右手のこぶしで腰を叩いていた。 「かぁ~、腰にくるなぁ。そういや、今日はりおちゃん来なかったな」 「ん?・・・あぁ、そういえば」 「うわっ、今の間は何よ。聞いてたら傷つくぞ」 「今日はいないから大丈夫」 そう言いながら倉庫を出た矢先、彼女の声が聞こえた。 「遅れて申し訳ありませんっ」体育館に入るや否や、土下座でもしそうな勢いで頭を下げている。 そこへ、現主将の浦和先輩が寄っていく。「もっぉ~、りおっち遅いって~。今日は終わっちゃったよ」 「ご、ごめんなさいっ。なかなか用事が済まなくて・・・」 「ま、いいからいいから。今日はお休みってことで」 「いえ、せめて片づけだけでも手伝いますっ」 「・・・りおちゃん、スゲーな」舞台横の時計を見ながら、佐藤が言う。 つられて見ると、時刻は6時過ぎだった。「俺だったから確実に来ねーよ、なぁ?」 「それよりも、6時間部活やって汗をろくにかいてない自分にびっくりだよ」 言いながら、俺は体育着の首元をひっぱり、匂いを嗅いだ。未だに洗剤の匂いがした。 「ん?・・・冬だからジャン?」 「お前、それ本気で言ってたら殴るぞ」 「んなこと言っても仕方ねぇだろうよ。俺らレギュラー外だもん」 佐藤は、俺の最大の悩みをあっさりと口にしてくれた。 そう。俺は大将と呼ばれているクセに、レギュラーではない。 部員数が100を超えていたり、全国に名を轟かす強豪校だというのなら、俺は甘んじてこの状況を受け入れよう。 ただ、現実は1,2年生合わせて20人ちょっとの部活で、全国どころか、地区大会を勝ち抜いたことすらない。 顧問の高橋先生は、俺のことが嫌いだ。ミーティングの時に俺の顔を見ないし、練習のときは俺に対する球筋がやたら緩い。 あんなもん、素人でも取れる。差し入れを持ってきたときは俺の分だけ足りなかったし、俺がいるのに体育館の鍵を閉めたこともあった。 りおちゃんがいなかったら確実に一泊していただろう。元大学選抜選手らしいが、その御眼鏡には俺のことが悪く映っているらしい。 確かに、俺はそれほどバレーが上手いわけではない。弱小校で頭を張っていただけで、主将に選ばれた理由も、おそらく実力ではないだろう。 バレーに限らず、スポーツ全般において優劣を分ける体格も、恵まれているとは言い難い。 一言で言うなれば、平平凡凡。誉められることも、怒られることもなくここまで成長してきた俺は、たかだか16年間生きただけで、己の人生の行く末を把握した。 ドラマティックも、スペクタクルも俺には用意されていない。 遠い、隣の世界の話だ。 156 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 52 24 ID BKFgU1gH 「大将、ギャラリー頼んでもいい?」 ナーバスになっていたところ、突然後ろから声を掛けられて、思わず体が跳ねた。 向き直ると、大川俊(おおかわ しゅん)先輩がいた。大川先輩はバレー部だということを疑うほどに身長が低く、無駄に声が高い。 「ああ、はい。大丈夫っス」 「ホント?悪いねぇ。俺ちょっと、今日は用事があってさぁ」先輩は満面の笑みを浮かべると、そのまま走り去った。 はぁ、とため息を一つ吐く。 「俺が行こうか?」心配したのか、佐藤が気を遣ってくれる。 「私がっ。私が行きますっ」また後ろから声がして驚く。そこにはりおちゃん、窪塚りおが高く右手を挙げて立っていた。 「あ、いや、いいよ」二人の申し出を断ると、りおちゃんはどこか悲しげな表情をし、佐藤はあからさまに呆れていた。 「頼まれたのは俺だし。それに、りおちゃんは今日休みな、って言われてたでしょ」 「でも・・・」 「ムダムダ、りおちゃん。コイツは人一倍意地っ張りだからさ」やれやれ、と言って首を振る。 「あぁそうだよ。どうせ俺は意地っ張りだっつうの」 「で、でも、でも・・・」りおちゃんは両手を胸の前で擦り合わせながら、モジモジとしている。 俺もたいがいだが、りおちゃんもなかなかだ。そしてりおちゃんは胸がデカイ。 「ほら、ミーテ始まるから先に行ってくれ。鍵も俺が閉めとく」 雑念を振り払って舞台袖へ向く。後ろから佐藤が「無理すんなよ」とふざけたトーンで言ってきた。それがどれだけありがたいか、アイツ自身は知らないだろう。 集会などで使われる舞台の下の両脇に、扉がある。 そこから裏方へ上がり、さらに階段を上ることで、大会などの時に保護者が来たり、横断幕を張るような通路、通称ギャラリーへと行ける。窓ガラスに沿って体育館の二階を、ぐるりと一周している通路だ。 バレーボールは、稀に、球を弾き過ぎてボールが乗ってしまうことがある。部活が終わってから、カーテンをしめたり窓を閉じたりするついでにまとめて回収するのだ。 また、今日はたまたまいないが、体育館で二つの部活が活動するときは、反面ずつに分かつ網状のカーテンをギャラリーから下ろすため、それをしまうこともこの時にする。 扉を開けて裏方に入ろうとすると、モップをしまっている梅ちゃんと目が合った。「あ、ギャラリー」 数秒待ったが、続きを言おうとしないので、解読することにした。 つまりは、俺が来たことでギャラリーという仕事を思い出し、もしかしたら、そのことを謝ったりもしているかもしれない。 「ああ、いいよ、気にしないで。俺いくから」できるかぎりの優しい顔と口調で返事をした。 「あ、う、あり、ありがとう」そう言うと、梅ちゃんは走っていってしまった。 お礼を言われるとは、予想外だった。同学年である梅本賢三(うめもと けんぞう)は内向的な性格のようで、いつも小動物のようにビクビクしている。 それでも、俺の努力の甲斐あって、先ほどのように心を開きつつある。 あれだな、テレビでやってる動物と触れ合いを中心に据えた番組。なんたら動物園。 あれでよくやっている、芸能人が珍しい動物を飼う企画。最初は脅えたり、拒絶していた動物が、初めて飼主の足元に擦り寄ってきた瞬間、あの時のような感動が今押し寄せてきている。 そうか、そのうち梅ちゃんも動物園に帰ってしまうのか、と不謹慎なことを考えながら階段を上った。 157 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 54 35 ID BKFgU1gH 薄暗い階段を抜けて視界が開けると、またもや驚いた。体育館の入り口に、りおちゃんが立っている。先にミーティングに行きなと言ったのに、なんと律儀なことか。 歩きながら暫く彼女を見ていたが、彼女はこっちに気付いていないようだ。ここぞとばかりに直視してみる。 りおちゃんは丸い。太っているというわけではない。普通よりほんのりと丸い程度で、体型的には普通といっても問題ないかも知れない。もしかしたら、雰囲気なども相まって、そう見えるのかもしれない。 クリクリとした瞳と割と大きめの唇が印象的で、黒のショートヘアーは爽やかさを醸し出している。身長は低めだが、その割には胸が・・・ りおちゃんと目が合い、慌てて逸らした。バカか、俺は。マネージャー、それも人様の彼女になに欲情してやがる。 もういちど見ると、彼女は笑顔で手を振っていた。濃い緑色のブレザー越しに、胸が揺れる。俺のバカ。 りおちゃんは主将、浦和好紀(うらわ よしき)先輩の彼女で、推薦での合格が出ているものの、まだ高校生ではない。 中学での授業が終わるとかけつけ、マネージャー業務をしてくれているのだ。正直、ありがたすぎて足を向けて眠れないが、やはり愛する彼氏のためなのだろう。 しかし、こうして一端の部員でしかない俺にまで優しくしてくれているあたり、浦和先輩がうらやましい。 「うしっ、完璧」 体育館の各所にある扉、窓、足元の小窓。順に指差し確認をしてから、防犯システムのスイッチを入れ、入り口の鍵を閉めた。 今なら某偉人に「してますか?」と訊かれても胸を張って返事が出来る。 「お疲れ様です」横にいるりおちゃんが微笑む。花が咲くよう、とはまさにこれで、一瞬見とれてしまった。 「ありがと。じゃ、行こうか」と言うと元気良く、はいっ、と答えてくれた。 ミーティングはもう始まっているだろう。ぜひとも走りたいのだが、りおちゃんがいる手前、それはやめておく。 柔道場と剣道場の前を通り、本館に移る渡り廊下を抜ける。あとは道なりに、視聴覚室、図書室の前を行けばラウンジがある。 下駄箱の前にあるラウンジは、壁が一面ガラス張りになっており、昼間はラウンジ全体が柔らかな日差しに包まれる。逆に、夜は不気味なことこの上ない。 柔道場を通り過ぎたあたりで、りおちゃんが急に言う。「先輩は好きな人とかいないんですか?」 「いきなりだねぇ」 「ダメですか?」 「ダメ、というか」『“彼女”いないんですか?』では ないあたりが寂しい。 「どうなんですか?」 「好きな人ね、いないよ」 「ホントですか~?」上目遣いで、少し近づいてきた。 口元に手を当てて反対側を向く。これ、だれかに見られたら誤解されるな。 「りおちゃんは・・・って、いるか。浦和先輩だ」相当混乱しているみたいだ、俺。 「ん・・・そうですね」りおちゃんは急にテンションが下がり、俯いた。上手くいっていないのだろうか。 苦し紛れで、浦和先輩が羨ましいね、と言うと、りおちゃんは勢いよく顔を上げ、何故、と言うような顔で俺を見てきた。 「りおちゃんは気が利くし、優しいし、か・・・たづけも上手いし」『可愛いしね』と言おうとして止めた。他人の彼女に言うのもどうかと思ったからでヘタレだからではない。断じて。 「私、優しくなんかないですよ。そうだな・・・例えば、好きな人に彼女がいたら、その人をころ・・・押しのけてでも付き合うだろうし」 「すごいなぁ」一瞬、マズイワードが聞こえそうだったが、空気を呼んで、ここは流す。ヘタレだからではない。多分。「じゃあ、もし好きな人が付き合うのを拒否したら?」 言ってから、後悔した。りおちゃんはいつも通り、いや、いつも以上の笑顔を浮かべたが、目は一切笑っておらず、瞳の黒がより濃く見えた。「どんな手を使っても、好きになってもらいます」 「すごいなぁ」具体的にどんな手を使うのか気になったが訊かなかった。ヘタレだからだ。絶対。 158 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 56 02 ID BKFgU1gH 学校から電車に乗って最寄駅まで帰り、そこから自転車に乗った。学校までも自転車で行けるのだが、朝はどうもテンションのせいでその気にならない。 冬の夜は、朝のような刺すような寒さとは裏腹に、どこか清々しい、気持ちのいい寒さと言える。 ミーティングはいつも通り行われ、いよいよ5日後に控えた地区大会についての説明があっただけだった。 今年は高橋先生の存在もあってか、期待がかかっているそうだ。メンバーもここ最近では最も粒揃いで、地区大会は勝ち抜ける、と先生は言っていた。俺はといえば、どうせ出ない試合なので興味が無く、りおちゃんへの失言をいつ謝るかを悩んでいた。 話の流れから推察するに、浦和先輩と上手くいっていないのだろう。そこへ、あの言い方はなかった。怒るのも当然だろう。 ミーティングが終わり、すぐ謝ろうとしたのだが、先ほどマッサージを約束した先輩につかまり、結局、りおちゃんは帰ってしまった。 電車の中、メールで謝ろうかとも思ったが、電池が切れていることを確認させられただけだった。さすがに、そろそろ替え時だろうか。 十字路を抜け、坂を下る。寺、酒屋、和菓子屋がいつも通りの順番で流れていく。信号で止まり、ふと横を見ると、一軒家の窓からあたたかな光が漏れていた。 帰る家に、あのような光が灯っていたのはいつまでだったか。車用の信号が黄色になった。赤になる前に、答えは出た。最初っから灯ってなどいない。 母は介護関係の仕事をしており、朝6時から、早くても夜9時まで家を開ける。 父に至っては、母よりも早く家を出て、母より遅くに帰るというハードスケジュールだ。 それ故、俺とは週に一度程度、それもニアミス程度の関わりしかない。何の仕事をしているか、知りたくても訊く機会が無いので諦めている。 3歳上の姉もいる。いや、いた。 母に代わって、我が家の家事全てを受け持っていたが、大学進学を機に県外に逃亡してしまった。それでも、「寂しい~」と泣きながら電話してきたり、「寂しかった~」とか言いながら、頻繁に帰ってくる。 断っておくが、家族間の中は悪いわけではなく、むしろ模範的な仲の良さである。 父か母、どちらかが休みだと聞けば、誰が言い出すでもなく全員が休みを合わせ、一日中一緒に過ごすというのも、もはや習慣となっている。姉は彼氏との約束をドタキャンしたほどである。逆に、その仲のよさが辛いと思うこともある。 いかんせん、父と母は忙しすぎるのだ。幼稚園の頃は閉園まで待っても誰も俺を迎えに来なかったし、小学校では授業参観などあったかどうかすら曖昧だ。 そのため、家に帰ったら家族が食卓についていて、遅いじゃないか憲輔、お疲れケンちゃん、今日はお鍋よ~、うふふ、あはは。などというのに憧れていたりはする。 「せめて、おかえりくらいはなぁ」 ぼんやりと呟いた言葉は白い靄になって浮かび、すぐに見えなくなった。 159 :Tomorrow Nver Cmoes一話「平平凡凡」 ◆j1vYueMMw6 [sage] :2009/01/21(水) 15 57 25 ID BKFgU1gH 案の定と言うべきか、いつも通りというべきか、家は暗かった。母の中途半端なガーデニング趣味が災いし、壁には正体不明の蔓が巻きついているのは相変わらずだ。 明かりの無いまま、おぼつかない手つきで鍵を開けると、まずは玄関、廊下、階段、居間、キッチンの電気を点ける。玄関の明かりを点けた時、大きめの何かがあったが、気にしないことにした。どうせ母が通販でまた何か頼んだのだろう。 「洗濯物入れて、掃除機かけて、風呂やって、飯作って・・・」居間でカバンを下ろしつつ、やるべきことを反芻する。こうでもしないと、スイッチが切り替わらない。 庭のほうからどんっ、という激突音がした。目をやると、シベリアンハスキーがガラス戸に前足をのせ、後ろ足で立っている。「待ってろ、マエダ。飯食ったら散歩に行くから」 ある日、突然にシベリアンハスキーを貰ってきたのは父だ。 その数日後、帰省した姉は黒いラブラドールレトリーバーを抱えていた。 飼い始めてから知ったのだが、我が家はどうも動物好きの血が流れているらしい。 帰りの遅い母が、帰ってきてから散歩に行ったり、ただでさえ家を出るのが早い父は、わざわざもっと早くに起きて散歩に行っている。 犬の世話に熱中して倒れて貰っても困るので、自粛するように呼びかけているが、あまり聞いてくれていない。 ちなみに、ハスキーがマエダで、レトリーバーがルイス。さらに言えばレトリーバーはメスで、どちらとも名付け親は俺だ。 とりあえず、先に二人にえさをやろう。そうでもしないと鳴き始めて大変なご近所迷惑になる。 こうやって、いつもどおりの一日が終わり、いつもどおりの明日が来る。そう思っていた。 テーブルの上の書置きと一枚の切符を見てから、少しだけ、捩れ始めた。 数時間前、彼女の人生は大きく捩れ、ブツリ、という音を発てて引きちぎれたのを、まだ知らないまま。
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「TBTOMORROW」は、1おくまん995年に発表されたTYUのシングル。 「たばたの数だけ強くなれるよ」のフレーズで大ヒットした。 つまり無限に強くなれる。つよい。 歌詞 たばたの数だけ強くなれるよ アスファルトに咲くたばたのように たばたのすべてにおびえないで たばたは来るよ 君のために 突然会いたいなんて たばたに何があったの あわててジョークにしても そのたばたが悲しい 股間の上には ほら月明かり 握りしめてる 肉棒とか 性欲とか 捨てたらもう たばたじゃないから たばたの数だけ強くなれるよ アスファルトに咲くたばたのように たばたのすべてにおびえないで たばたは来るよ 君のために 季節を忘れるくらい いろんな たばたがあるけど 1100人で ただ歩いてる この感じがいとしい 頼りにしてる だけど時には たばたの股間 放り投げて 出してもいいよ 突き合うから カッコつけないで たばたの数だけ強くなろうよ 風に揺れている 股間のように たばたをそのまま 信じていてね たばたは来るよ どんな時も たばたの数だけ強くなれるよ アスファルトに咲くたばたのように たばたのすべてにおびえないで たばたは来るよ君のために たばたの数だけ強くなろうよ 風に揺れている 股間のように たばたをそのまま信じていてね たばたは来るよ どんな時も たばたは来るよ 君のために
https://w.atwiki.jp/ml-story/pages/330.html
プラチナスターチューンー ~Tomorrow Program~ユニット紹介:トゥインクルリズム 第1話 開演☆ファン感謝祭♪ ouverture:ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム 第2話 必見☆魔法少女たちの軌跡 第3話 襲来☆復活のギョーカイジン! 第4話 終演☆また会う日まで! MV(並び順) エピローグ オフショット☆素顔の魔法少女たち 相談テキスト 楽曲 その他イベント開催期間 リバイバル公演開催の経緯 小ネタ 前後のイベントコミュ 同ユニットの他のイベントコミュタグ一覧 プラチナスターチューンー ~Tomorrow Program~ ユニット紹介:トゥインクルリズム 悪のギョーカイジンと戦う魔法少女ユニットだよ! まちの平和を守るため、今日も変身して戦うんだから♪ よい子のみんな、応えんしてねっ!! 第1話 開演☆ファン感謝祭♪ 『トゥインクルリズム』のファン向け感謝祭 が開催! 司会を務める春香に続いて、育、 百合子、亜利沙が登場、会場は出だしから 大盛り上がり! 魔法のカメラで記念撮影を したら、イベントスタート♪ 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育、天海春香 ouverture:ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム さらわれた人達が怪物にされちゃった!? 町の平和を守るため、魔法少女達は立ち上がる。 負けるな、トゥインクルリズム! 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育 第2話 必見☆魔法少女たちの軌跡 『トゥインクルリズム』の放送を振り返り、 コメントしていく3人。誰もが持つドリーム パワーを強めるには、世界をラブで溢れさせる 事が大切……そう聞いた子ども達は、家族や 友達に優しくすると約束するのだった。 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育、天海春香 第3話 襲来☆復活のギョーカイジン! 敵を倒すには敵を知ること……という事で、 ギョーカイ用語クイズをする一同。しかし、 そこに倒したはずのギョーカイジンが登場! 観客のひとり(ひなた)を人質にしてしまう ……どうする? トゥインクルリズム! 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育、天海春香 三浦あずさ、菊地真、木下ひなた 第4話 終演☆また会う日まで! 観客全員を人質にされてしまい、絶体絶命の トゥインクルリズム。しかし、みんなの応援の おかげでドリームパワーがチャージ完了! ひなたを救出、ギョーカイジンを撃退する。 こうして、町の平和は守られたのだった。 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育、天海春香 三浦あずさ、菊地真、木下ひなた MV(並び順) 七尾百合子、松田亜利沙、中谷育 エピローグ オフショット☆素顔の魔法少女たち イベントに続いて、リバイバル公演を無事に 成功させた育、百合子、亜利沙。見に来ていた ひなたや春香に褒められ、亜利沙は気絶。 しばらくして目を覚ました亜利紗は、感謝の 言葉と共に公演の動画を要求するのだった。 松田亜利沙、七尾百合子、中谷育、天海春香、木下ひなた 相談テキスト + 松田亜利沙 松田亜利沙 相談1 ふぉぉぉ! ついに、この日がやってきました~! また育ちゃんと百合子ちゃんの魔法少女姿を、 見ることができるなんて……ムフ、ムフフフフ♪ 解決1 ありさも魔法少女……? ハッ! そ、そうでした。 トゥインクルリズムの一員として、ちゃんとしないと。 と、とりあえず、ウィップの扱いは完璧にしますーっ! 相談2 ○○Pさん、情報交換の時間です! さあ、アイドルちゃんの写真を差し出すのです! ありさの目は、誤魔化せませんからね? ムフフ~。 解決2 って……あれ? ありさの写真ばっかり? ……「今推してるアイドルの写真」!? や、やぁ~んっ! 不意打ちはやめてくださいーっ! 相談3 ○○Pさん、会場のみんなと 写真を撮りたいんですけど……ダメですかね? いい記念になると思うんですケド……。 解決3 いいんですか!! ありがとうございますぅ~! 撮影ならお任せ下さい! データは ありさが個人的にも集めて……ムフフ~♪ 相談4 アイドルちゃん好きのスタッフさんと、ちょっと 情報交換を……。○○Pさん? 変な顔して、どうかしましたか? 解決4 ひぃぃ!? いつの間に、コンサートライトを手に!? 危うくステージに持ち込むとこでした……。 ○○Pさん、ありがとうございます! 相談5 あ、あの、○○Pさん! ありさ、ギョーカイ用語よりも、アイドルオタク 用語の方が自信があったりするんですケド……チラッ。 解決5 問題は変えられない? で、ですよね、 言ってみただけです! ギョーカイ用語も少しだけ なら……ガチンコで完パケまで頑張りますよぉ! 相談6 はあ~。育ちゃんも百合子ちゃんも、天使みたいな かわいさで、それでいて頼もしくて、笑顔が眩しい…… あ、あああ~……ああああーーーッ!!! 解決6 ……ふぉっ! えっ、ありさ……叫んでましたか? いま、ちょうどユニットのこと考えてて…… ううっ、無意識でした。これからは気を付けます! 相談7 悪い人がありさの大好きな育ちゃんや百合子ちゃんに 手を出したら、ありさは絶対許しませんっ! アイドルちゃんの平和は、ありさが守りますっ! 解決7 え? ○○Pさんも一緒に戦うん ですか? ありさも大事なアイドルだから、って…… そ、その言い方はズルいですよぉ! 相談8 今さらですけど、ありさなんかが、こんなに凄い役を もらえてるのって、おこがましい気が してきました……いいんでしょうかね? 解決8 ありさが適任? ……そ、そこまで……うぅ、 ありがとうございます、ありがとうございます! その言葉だけで、ありさ頑張れますっ! 相談9 むむむ……せっかくのリバイバル公演、 本当は最前列で見たかったです! あれ? ありさ、何か忘れているような……? 解決9 おっと、そうでした! これから本番でしたね! あっ。育ちゃんと百合子ちゃんが呼んでるみたいです。 行ってきますね、○○Pさん! 相談10 ありさは、主役という器ではないと思うんです! むしろ、アイドルちゃんを引き立てる方が役得…… じゃなくて、その方が、味が出ると思いませんか? 解決10 「そんな心構えじゃダメ!」……むむっ、確かに。 ありさは今、魔法少女ですカラ! 自分に 魔法をかけて……頑張りますよぉ! 相談完了 ○○Pさん、相談に乗ってくれて、 助かりました! 本当にありがとうございます~! 一時はどうなることかと……ありさ、感激ですぅ~! + 七尾百合子 七尾百合子 相談1 いよいよ、イベントの本番ですね! たくさんの子ども達に夢をあげられたらいいなぁ♪ 本番に向けて、何か気をつけることはありますか? 解決1 元気、勇気、ドリームパワーを意識する……。 なるほど! 私達もトゥインクルリリーとして、 みんなと一緒にキラキラできるように頑張りますっ! 相談2 あの、○○Pさん……。 しおりを見ませんでしたか? ホログラム仕様の トゥインクルリリーのしおりなんですけど……。 解決2 ええ、そんなところにっ!? そうだ…… 読書中に呼ばれて、そのまま置いちゃったんでした。 よかった……見つけてくれてありがとうございます♪ 相談3 イベント中の風景を亜利沙さんが撮ってくれるんです! 会場のみんなと一緒に写った写真…… きっと、素敵な思い出になりますよね! 解決3 えっ。写真のデータ、持ってるんですか? ……わあ~! みんな、いい笑顔してますね。ふふっ♪ よーし、パワー充填完了! この後も頑張りますっ! 相談4 うーん……私、役に入り込みすぎて、 周りが見えなくなっちゃうことが、たまにあるんです。 どうしたらいいでしょうか? 解決4 欠点を自覚してるなら、改善の余地はある……。 な、なるほど。少しでも変われるように、 努力してみます! それが私の成長物語ですから! 相談5 私、ギョーカイ用語について勉強してきたんです。 さて、○○Pさんにクイズです! 『テッペン』とは、何のことでしょうか? 解決5 大正解ーっ! 『テッペン』は夜の12時のことです! 業界人にとって、基本中の基本ですよね♪ さすが、○○Pさんです! 相談6 私たち、とっても相性がいいなって 思うんです! ユニットとして……ま、まさか、 そう思ってるのって、私だけですか? 解決6 ○○Pさんも、そう思いますか! 困った時は助け合って、嬉しい時は一緒に喜んで…… 本当に、仲間って素敵ですね♪ 相談7 たまに考えたりしませんか? 今、この瞬間に、 ギョーカイジンが乱入して襲い掛かってきたらって。 そしたら私、変身して、華麗に撃退を……! 解決7 あ……なんていうか、えへへ。私のこんな 妄想話にも付き合っていただけるのが、その、 とても、すごく……信頼していますっ! 相談8 うーん……ちゃんと魔法少女になれてるか心配です。 みんなの夢を壊してないといいんですけど……。 ○○Pさん、大丈夫でしょうか? 解決8 バッチリ……? あの、本当の本当の、 本当に……? あ、い、いえ、疑ってるわけ じゃなくて、う、嬉しくてつい……! えへへ。 相談9 トゥインクルリズムのリバイバル公演、本番ですね! この前のイベントは、小さなお友達がたくさん観にきて くれましたけど……今回はどうなんでしょう? 解決9 映像、見せてくれるんですか? わぁ…… ファンのみなさんもですけど、小さなお子さんの姿も たくさん! どんな公演になるか楽しみですね♪ 相談10 みんなと話してたら、妄想が暴走しそうになって……。 慌てて口を閉じたんですけど、舌を噛んじゃいました。 ううっ。もっと自重しないとダメですよね……? 解決10 次は黙らなくていい? い、いいんですか!? 止めてくれないと、いつまでも喋っちゃいますけど…… はい、わかりました! 全力で挑みますね! 相談完了 ○○Pさんには、助けてもらって ばかりですよね。なんてお礼をしたらいいか……。 いつもありがとうございます♪ えへへ。 + 中谷育 中谷育 相談1 わたし、ずっと今日のイベントを楽しみにしてたんだ! りっぱな魔法少女として、みんなを楽しませるね。 応えんしてくれる? ○○Pさん。 解決1 ありがとう~! ○○Pさんが 応援してくれるなら、わたし勇気いっぱいだよ! ギョーカイジンもこわくないかも! えへへ。 相談2 おかあさんが、お仕事の見学に来てくれるんだって! わたし、どうしてもいいところを見せたいんだけど…… どうしたらいいかな? 解決2 いつものわたしで大丈夫……。そっか。 余計なことをして、失敗しちゃったらイヤだし。 たくさん練習もしたもんね! うんっ! 相談3 ドリームパワーは、みんなが持ってる魔法の力で、 魔法少女の力のみなもと! ……あれ? それじゃあ、○○Pさんも……? 解決3 やっぱりそうだったんだ! わたし達、仲間だね♪ わたしがピンチになったら、 ドリームパワーで助けにきてね? 約束だよ! 相談4 あっ!? わたし、さっきスタッフさんに、まちがえた こと、伝えちゃったかも……ど、どうしよう~!? わたしのせいで、トラブルになっちゃう……。 解決4 スタッフさんに、ちゃんと伝えてくれたの? よ、よかった~! これで安心してお仕事できるね。 ○○Pさん、ありがとうっ! 相談5 トゥインクルリズムは正義の魔法少女だから、 まちがったことは許さないよ! でも…… 現実だと、どっちが正義かわからない時もあるよね? 解決5 そっか。○○Pさんみたいな大人でも わからないことがあるんだね。 もし悩んだ時は、いつでもわたしに相談してね! 相談6 百合子さんも亜利沙さんも、色々とわたしを、 大事にしてくれるけど……それってやっぱり、 わたしが子どもだからなのかな? 解決6 わたしが、頑張ってるから? そ、そうなんだ…… で、でも、そんなの当然だし。わたしのこと、 子どもだと思わないでほしい! わかった? 相談7 もし本当に、ギョーカイジンがいたら、 ちょっとこわい気がする……。わたしなら、 トゥインクル・プリンセスみたいに戦えないよ……。 解決7 ○○Pさんが、守ってくれるの? ありがとう♪ ○○Pさんが 一緒なら、わたしも戦えるかも! 相談8 朝、めだまやきが上手に焼けなかったの……。 おかあさんは「気にしないで」って言ってくれたけど、 なんだかモヤモヤしちゃって……うう。 解決8 「魔法少女は元気が一番」……そ、そうだね! こんなこと気にしてたら、魔法少女らしくないもん。 うん。わたし、気にするのやめるね! 相談9 わあ~! ファンのみんながいっぱい来てくれてる! たくさん練習したし……きっとうまくいくよね? ね? ○○Pさん……。 解決9 ありがとう、○○Pさん! 今、すっごいドリームパワーもらっちゃったかも♪ わたし、全力でがんばるから、ちゃんと見ててね? 相談10 わたし、毎日牛乳のんでるんだ。 背が高くなりたいから! でも、あんまり大きく なった気がしなくて……本当に効果あるのかな? 解決10 成長期だし、これからおっきくなる? そっか。信じて続けることが大事なんだ…… アイドルも同じだね。うん、がんばってみる! 相談完了 わたしのお話聞いてくれて、ありがとう! まだ知らないこととか、わからないことがたくさん あるけど、これからもお話してくれるとうれしいな♪ 楽曲 Tomorrow Program(ニコニコ大百科(仮)へ飛びます) その他 イベント開催期間 2021年8月3日~2021年8月10日 リバイバル公演開催の経緯 トゥインクルリズムの番組の評判を受けて、 ファン向けのイベント企画のオファーが届く。 プロデューサーはイベントがあるなら劇場でも リバイバル公演を行うのはどうかと提案し 高木社長も乗り気で了承する。 (プロローグより) 小ネタ トゥインクルリズムの名乗り口上 百合子「平和へのプロローグ! トゥインクルリリー!」 亜利沙「夢見る超常現象! トゥインクルアリサ!」 育「希望のサンシャイン! トゥインクルプリンセス!」 育「世界に輝く!」 百合子「愛の結晶!」 亜利沙「魔法少女ぉ~……」 3人「トゥインクルリズムッ!!」 (第1話 開演☆ファン感謝祭♪より) 前後のイベントコミュ 前:ユニットオフショット Vol.5 次:真夏のダイヤ☆ 同ユニットの他のイベントコミュ ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム(トゥインクルリズム) タグ一覧 トゥインクルリズム プラチナスターチューン 七尾百合子 三浦あずさ 中谷育 天海春香 木下ひなた 松田亜利沙 菊地真 名前 コメント すべてのコメントを見る
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Format Title Artist Label Model Number Release Press 7 TOMORROWLAND SALU TOY S FACTORY,LEXINGTON LEXAL007 2016/03/17 - 234673336_624.v1458744309.jpg Side Track Title Produce A 1 TOMORROWLAND tofubeats B 2 TOMORROWLAND(Inst) tofubeats PERTAIN CD Good Morning